大塚澪音
武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コースに在籍中から暴力性や人間の複雑な本質をテーマとした作品を発表してきた大塚は、1950年代後半のアメリカで発展した「ポスト・ペインタリー・アブストラクション」に代表される偶発的なステイニング技法を採用し、サテンとインクの組み合わせによる独自の表現方法を確立しました。彼の作品におけるインクの滲みによる境界線の曖昧さは、人と人、要素と要素の複雑な関係性を浮かび上がらせ、滲みによって歪んだ輪郭は制作のテーマである人間の持つ暴力的な要素を引き立てています。同時に、優しさや共感性などの相反する要素も表現しており、人間の複雑な本質に焦点を当て、誰しもが共感できる精神的な領域を探求しています。
大学院修了を目前とした時期に変化が訪れました。「暴力というテーマから一旦離れたいと思った。暴力性をテーマに掲げたのは、自身が持つ性質のことからで、それをテーマとし制作することは、自分の負の一面に正面から向き合う事であった。それはすごくストレスがかかる。私はすさんでいき、生活もままならず、いつのまにか育てていた観葉植物は枯れていた。人間だけでなく植物まで傷付けているような気がした。」
「今は考えることを休むべきだと思った。自然な気持ちで作品を作りたいと思った。身の回りのものが気に入っているから、サテンの輝きとインクの滲むさまが美しいから、それだけの理由で制作する事が今は必要だった。」と語り、卒業制作で完成させた大作では、人々が自由気ままにくつろぐ様子が描かれ、そこに流血や暴力はありません。また観葉植物をモチーフとした新作を制作しており、大塚自身が「暴力期から浄化期への移行段階」を進んでいるように思えます。
WORKS
BIOGRAPHY
2001年生まれ 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了
PAST EXHIBITIONS
(主要抜粋)
2023年11月 東京、ena美術ギャラリーにて、グループ展「仕方がないのでお手紙書いた、さっきの手紙のご用事なあに」
2023年11月 Sho+1にて、グループ展「new age entrophy」
2024年8月 東京、シャトー小金井にて、個展「Jet the Phantom」
2024年8月 東京、converse TOKYO 渋谷宮下パーク店にて、企画展「BLUE's」
2024年8月 東京、銀座日動画廊にて、「銀座日動画廊主催第11回未来展」、グランプリ
2024年11月 東京、立川アートランドにて、グループ展「+unknown」
2025年1月 武蔵野美術大学卒業修了制作展、優秀賞
2025年3月 東京、アートフェア東京 19、Sho+1のブースにて展示
ARTIST’S SNS
https://www.instagram.com/re_ono_er