DONGI LEE
アトマウスの再来

2021年6月5日(土) ー 7月3日(土)12:00 18:00 *日・月・祝 休廊

Sho + 1では6月5日より、Dongi Lee(李東起|イ・ドンキ)の個展「アトマウスの再来 Redux Atomaus」を開催致します。韓国ソウルでは第一世代のポップ・アーティストとして評価され、サムスン美術館(Leeum)にも作品が永久収蔵されています。本展のタイトルにあるアトマウスとは、鉄腕アトムとミッキーマウスという、日本とアメリカの象徴的なキャラクターが融合した、ドンキオリジナルのキャラクターです。1994年に開催されたグループ展で初めて世に発表されました。本展では、彼の代表作「アトマウス」シリーズに焦点を当て、新作を含めたキャンバス作品を展示いたします。

アトマウスの誕生
 – アトムとミッキーマウスの融合 –ドンキは過去のインタビューで次のように述べています。「ある日頭の中にアトムとミッキーマウスを融合した顔が浮かび上がった。2種類の記号を結合して新しい記号を一つ作り出すことは、一種の概念美術だと考えた。とても論理的な過程だと感じて記号を描くように白黒で描いた」 アトマウス誕生当時は、美術作品ではなくマンガと論評されました。現在までに至る彼の活躍を考えると、当時の批評は表面的だったといえるでしょう。 
Lee Dongiの制作における試行錯誤、連綿たる想いが、ある時『アトム』と『ミッキーマウス』という共にシンボリックなキャラクターを融合させた『アトマウス』となって彼の中に誕生し、 27年経った現在も自国韓国にみならず、世界中で親しまれています。 

善悪を見分ける電子頭脳と、時には涙を流すサーチライトの目。困窮者には自分を犠牲にしてでも手を差し伸べる優しい心があり 、人と同じ感情を持った少年ロボット「アトム」。 主張しずぎる性格ではなく透明な存在として他のキャラクターを応援することに徹し、その揺るぎのない姿勢でディズニーの世界観を守り続けると同時に、ブランドの象徴となっていく「ミッキーマウス」。 

あまりにも有名なこの二つのキャラクターとアトマウス自身の、ある特徴に改めて注目すると、ドンキの想い、メッセージが見えてきます。 

ミッキーマウスの耳は、どちらの方向を向いていようと必ず画面の正面を向くように描かれています。アトマウスの耳もまたアトムの印象的な髪のフォルムを残しながら、その形は常に正面を向いていています。 時代の叫びを聞き逃すまいというドンキの真摯な想いが、その形状とルールを創り出したのでしょう。 

そして、アトマウス自身の表情が印象的です。瞳は感情の起伏を持っておらず、口元も多くを語らないかのように閉じています。 今回展示するフラワーガーデンシリーズでは、画面のおおよそ半分程を埋め尽くした花畑を前述の表情でアトマウスが左右さまざまな場所から、その景色を俯瞰し見つめています。 それは、まるで過去・現在・未来を案じているようです。 

一見カラフルで愛らしい作品の根底には、その時代を正面から見つめ続けるドンキの揺るがない視点があります。 1990年代、ドンキのそういった日々の延長線上で「アトマウス」が突如として誕生したことは必然だったのかもしれません。アトマウス誕生に至るまでのアーティストの葛藤を想像せずにはいられません。 
作家の出身国である韓国のみならず、世界中の人々を魅了するヒーローであり、親しみやすいキャラクター「アトマウス」。 インターネットを通じた交流が主流となり、気軽に誰とでも繋がることが出来る現在、冷静な眼差しで善悪を判断し、言葉で人を傷つけるこのない想像力が求められています。 パンデミックが世界中を襲い、複雑な問題を多く抱えている今だからこそ 、ぜひこの機会に、作品を実際に鑑賞することで、「アトマウス」から言語を超えたメッセージを感じとっていただけたら幸いです。
Dongi Lee, Multi Atomaus Virtual Insanity 2019 – 2020, Acrylic on canvas,100 × 100cm
Dongi Lee, Jail 2020, Acrylic on canvas, 50×120cm

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