赤西千夏の新作を展示しております
赤西千夏は、ヴィジュアル系やジェンダーに関する作品を発表している現代美術家です。赤西は、ロマンティックでセンチメンタルなピンク色の世界で、空想を弄びながら息を潜めているかと思いきや、気絶すれすれの冷静な眼差しで自分自身を見つめ、とりつかれたように何かを追いかけています。赤西にとって描くことは、身体性の限界からの脱却に挑戦することであり、「孵化する曖昧なジェンダー」に「決められた性、人間とそれ以外の境界を崩し新しい姿形を与える」ための活動なのです。
アーティスト・ステイトメント
私が描く絵に登場する者は過剰な装いで性別が隠れた単に美しいものだと思っている。
私はヴィジュアル系と括られるミュージシャンたちの装いから着想を得て絵画制作をしている。ヴィジュアル系バンドマンは派手な化粧と衣装で過剰に着飾っているのが特徴だ。彼らはほとんどの場合身体は男性であるが過剰装飾によって見た目の性別は曖昧となり社会の性的役割から逸脱し、時には人間からも遠くなったような美しい外見をしている。
化粧や着飾ることは女性の領域、男性は外で働くものという既存の家父長制秩序の常識とは逆のことをしているヴィジュアル系は家父長制秩序に反抗する特殊な観客にしか歓迎されない文化として一般から周縁化を受けてきた。それ故未だに差別的な視線を向けられることがある。ヴィジュアル系が好きだった私もかつて周りからそんな視線を向けられていた。
美しいものに憧れたりすることは直接何かの役に立つものではないし、将来に向けて世の中に順応しようとしていた思春期の不安定な私は、大人にとって不要なものが好きな自分はきっとおかしいんだと思い込み、不要な美しさに耽溺する自分なんて捨てて無かったことにしようとした。自らの性的役割を受け入れ難くともそうならなければならないと思っていた。
この世界は誰かが作った規範的な人物のイメージが蔓延している。それに合わせて自分を矯正しなければいけないと思い込んだ私は一度自分自身を消してしまった。誰かの視線を内面化し自らを平均化しようとする中で失っていったものを今の冷静になった視点で見つめ姿形を形成しなおしている。
プロフィール 女子美術大学専攻卒業 ゲンロン新芸術校第6期修了 https://www.instagram.com/franmany6/