(左から)ポール・ソルバーグ (マコスのクリエィティブ・パートナー)、ピーター・ワイズ(マコスとポールのビジネス・マネージャー)、佐竹、クリストファー・マコス


Vol.2 ニューヨーク・クロニクル 1970-80s:

ダウンタウンから生まれた肖像たち

マン・レイに師事した写真家、クリストファー・マコスは、1948年、アメリカ・マサチューセッツ州ローウェルで生まれ、ニューヨークを拠点に活動しています。

彼は、アンディ・ウォーホルがもっとも信頼を寄せた写真家の一人であり、公私にわたる深い交流でも知られています。

ウォーホルの中国を含む世界各地の旅にしばしば同行し、そのプライベートな瞬間も撮影し続けました。

私自身、ウォーホル作品を扱う立場から、ウォーホルの肖像に常に強い関心を抱いていました。

ニューヨークのパブリッシャー、ロナルド・フェルドマン社は、ウォーホルの後期作品(主に1981年以降)を出版しており、同社がウォーホルの撮影作品を扱った際、そのアイデアの源泉となったのがマコスであったということを知りました。

1995年、私はマコスのニューヨークのスタジオを訪れ、ウォーホルを撮った彼の数々の写真を見せてもらいました。マコスのクリエイティビティに強く影響を受け、私自身も彼とプロジェクトを試みることにしました。

具体的には、ウォーホル、ジャン=ミッシェル・バスキア、キース・ヘリング、ジュリアン・シュナベル、ディヴィッド・サーレー、ケニー・シャーフ、フランチェスコ・クレメンテという七人のアーティストたちのポートレートを、通常の銀塩プリントではなく、リネン生地にフォトグラヴュール技法でプリントするというものです。これは、ロバート・メイプルソープが頻用した技法のひとつで、銀塩プリント特有のシャープで硬めのコントラストに対し、フォト・エッチング(フォトグラヴュール)を用いることで、写真自体に柔らかさやたおやかさを付与するものです。プリント作業は、メイプルソープのプリンターも務めたスー・エヴァンス氏に依頼しました。

この作品は、私が以前運営していたギャラリーで展開したプロジェクトで、マコスは私のアイデアを大変気に入ってくれ、シングル作品および、4枚の写真を糸で縫って繋げる作品という2種類の形式を発表しました。

マコスとの個人的な思い出としては、私自身のポートレート撮影を彼に依頼したことがあります。彼の肖像写真シリーズ「Stand Up Portrait」では、人体を「頭—上半身—下半身—足」と四分割し、それぞれの部分を撮影し、後に繋ぎ合わせるという手法で作品を発表していました。当時としては非常に斬新なアプローチの肖像写真家であったと、今なお感銘を受けています。

クリストファー・マコス、アンディ・ウォーホルの肖像、25.6 x 20.5 cm, エディション: 10, リネンにフォトグラヴュール
© by M A K O S, 2025
クリストファー・マコス、ジャン=ミッシェル・バスキアの肖像、1995年、25.6 x 20.5 cm, エディション: 10, リネンにフォトグラヴュール
© by M A K O S, 2025
クリストファー・マコス、キーヘリングを撮ったコンタクト・シート
© by M A K O S, 2025