ギャラリーショウでの展示風景 / Installation View at Galerie Sho Contemporary Art


Vol.1 巡り巡るミッキーマウス

本作は、非常に印象に残る作品です。

1989年当時、御殿場にクラシックカーの美術館を所有していたM氏は、車だけでなく現代美術、特にポップ・アートにも関心を抱き、ウォーホル作品に注目されました。私と親交のあったニューヨークのプライベートディーラー、ニコラス・サンズから、ウォーホルの「シューズ」シリーズ(1980年作)を含む複数の作品を購入され、私のもとにも幾度となく足を運ばれました。

その中でも、このミッキーマウスが描かれた作品は特にお嬢様に気に入られたとのことです。私は当初、ギャラリー・コレクションとして非売扱いとしていましたが、M氏に何度も「いくらなら譲っていただけるか」と尋ねられ、冗談半分で「3億円」と答えたところ、M氏はその金額で購入され、1週間後に決済が行われました。

その後しばらくして、バブル崩壊後の1998年頃、ニコラスから連絡があり、この作品がニュージャージーのコレクターの手に渡っていると知らされました。知らないうちに売却されたことに驚き、ニコラスに現所有者が売却の意思を持っているか確認したところ、90万米ドルであれば譲ってくれるとのことでした。私はニコラスに5万米ドルのコミッションを支払い仲介してもらい、この作品はまるでブーメランのように再び私の手元に戻ってきました。

そして2011年、この作品は再び香港のコレクターに230万米ドルで販売されました。

長い年月を経て、作品が世界中のコレクターを巡りながら価値を増していった過程は、この作品の特別な魅力と歴史を物語っています。