巡りあう才能 2006 − 2022
Destined Encounters
参加作家
大槻素子、吉岡雅哉、増坂力蔵、田薪玉(タ・シンウ)、ホ・ユア、薛在玲 (ソル ジェヨン)、吉田紋、もりいつき、眞喜志木の実、本城葵、lil undone、平間ミーナ、山上ひかり
2022年5月20日(金)- 7月2日(土)
前期:5月20日(金)- 6月11日(土)
後期:6月15日(水)- 7月2日(土)
【オープニングレセプション】 5月20日(金) 18:00~20:00
12:00 - 18:00
日・月・祝 休廊
Sho+1では、2022年5月20日(金) から 2022年7月2日(土)までの期間、グループ展『巡りあう才能 2006 − 2022』を開催いたします。
過去数ヶ月にわたり、新しい才能を発見するため数多の美術大学や機関に足繁く通い、有為なアーティスト達との出会いがあった。今回は、私の中で記憶に残る2006年に出会った2人のアーティスト、大槻素子と吉岡雅哉に加えて、今年発見したアーティスト達の作品で構成するグループ展を開催する運びとなった。大槻素子は、私が2006年当時に組織したギャラリー・ショウ・プロジェクツという実験的な活動の中で出会い、非常に心に刺さったアーティストである。彼女は日常的な風景を、油絵の特性を活かし独特のタッチで描く。その作品は、観る者にまるで子どもの頃の思い出を蘇らせるような情緒的な雰囲気を醸し出している。吉岡雅哉は幼少期に、ある特殊なハラスメントを繰り返し受けたことによる悲劇的な記憶から、この事が吉岡を極めて偏狭的な性的幻想へと誘った。例えば、彼の「西海岸」シリーズでは、青天下で無防備なエロスが繰り広げられる。また「お月見」シリーズには、怪しげな空間に陰鬱ながらも浪漫を感じさせる独特のムードが漂っている。一方で、今年出会ったアーティスト達はいずれも未だベールに包まれているが、まずは増坂力蔵のマルチな才能に魅了された。彼は動画作品からグラフィカルなデザインの領域まで幅広い活動を展開している。今回ご紹介するコンピュータ・ドローイングを駆使した動物シリーズ作品は、シニカルでウィットに富んでいる。タ・シンウは中国人アーティストであり、日本人と異なった視点で描いた大都市東京は、私にとって目新しくとても魅力的だ。韓国人アーティストのホ・ユアは、想像の中の風景を描く。彼女の光の表現は岩絵具という素材の魅力が活かされており、ジェニファー・バートレット、ロバート・ベクトル、ポール・ウォーナーらカリフォルニアのアーティストたちが描き出す光を想起させる。ソル・ジェヨンのメゾチント技法は群を抜いて素晴らしく、星をロマンティックにそしてまばゆいばかりの美しさで描き出している。彼女の「クリスタル・クリア」シリーズの連続的な集積は、ヴィヤ・セルミンズの繊細な制作手法を彷彿とさせる。吉田紋はまるで異次元に存在しているような様々な動物や少女を絵の中に登場させ、モノクロマティックな色調で描くことで独自の世界観を追求している。もりいつきは不思議の国の住人のようにカラフルで、ポップでスウィートな宇宙を創造する。眞喜志木の実は正統派のグラフィック・デザインを学んだのち、絵画作品ではコラージュやアッセンブラージュ技法を多用する。彼女が表現する世界は、無邪気な遊び心に溢れている。本城葵が最も大切にしていることは絵の中にスピード感や動きを求めることである。たとえば風景画一つをとっても、彼女はそこに動きを感じさせるエッセンスを織り込む。lil undoneはデジタル世代の申し子として、コンセプチュアル・アートを表出する。彼の作品「Come up During Tokyo」は、ヒップホップ・アーティストのトラヴィス・スコットの「アストロ・ワールド」からヒントを得ており、iPadで制作したドローイングをデジタライズし、過去の曖昧な記憶やゆらぎを表現している。平間ミーナが描く絵の中には身体を媒介とした魂が宿るパフォーマンス性があり、そこに鑑賞者は作家の狂おしい心の叫びを感じざるを得ない。山上ひかりは様々な職業を通してマルチな才能を発揮している。これまで自己を対象とした写真表現を続けてきたが、今回は物語性に富んだ創作に取り組んでいる。
この展覧会が、1981年パティ・アストアとビル・ステーリングにより設立されたニューヨーク、イースト・ヴィレッジのFun Galleryで展開されたアヴァンギャルドで自由な創造の場の再来となることを願っています。
Sho+1
代表 佐竹昌一郎