MITSURU SAKURAI
櫻井充

櫻井充の写真は、無機質でありながらも鮮鋭な印象を与えます。初めて櫻井の作品に出会ったのは、2021年4月、アーツ千代田3331で開催されていた個展「Fe」においてでした。鉄という素材そのものに焦点を当てた展覧会で、櫻井は鉄塔をはじめとする鉄から生まれた建造物の一部を、独自の視点で切り取り、静謐で力強いイメージとして提示していました。構造物それぞれが持つディテールは厳選され、フォルムは美しく際立ち、無機質な鉄がまるで生命を宿したかのような存在感を放っていたのが印象的でした。続くシリーズでは、日本各地の灯台をテーマに取り上げました。こちらにも櫻井ならではの感性が表れており、大判プリントで映し出された灯台の姿を前にすると、まるで時空を超えて旅をしているかのような感覚に包まれます。櫻井はこれまで、三菱重工のロケット組立現場や鉄塔、灯台といったスケールの大きな構造物を被写体としてきました。シリーズ「Fe」「BP」を通じて、人工物と空間、視点との関係性を探求した後、現在は新シリーズ「イム」にて「私」という内面的主題に取り組んでいます。
表現の変化を模索する中で、仏像を撮影する機会を得たことを契機に、仏教や仏像の背景に関心を持ち、奈良を訪問します。そこで出会った精神性の深さに強く打たれ、安易に自身の作品に取り込むことへの違和感を抱きます。結果として、自身を主題とするセルフ・ポートレートへと立ち返り、表現の原点を見つめ直すこととなりました。
仏像が「悟りや真理のかたち」であり、本来は人目に触れない存在であるという認識から「見えない存在」と「見えるかたち」の関係を自身に重ね、表現の軸としています。また、観察によって対象の状態が変化するという量子力学的視点を参照しながら「自己」という多面体を再構成する取り組みを続けています。



 
1979年 東京都生まれ
2003年 東京造形大学 造形学部デザイン学科 視覚伝達専攻写真コース卒業
2023年 東京造形大学 造形学部デザイン学科 写真専攻領域 非常勤教員 在職中

 
2014年 Prix de la Photographie de Paris(PX3)Nature/Wildlife部門 金賞
2016年 Graphis Photography Annual 2016 金賞
2019年 IPA (International Photography Award) Architecture/Industrial部門 1位
2021年 東京TDC賞2021 ポスターBカテゴリー ノミネート
2023年 ソニーワールドフォトグラフィーアワード 2023 プロフェッショナル部門 Architecture & Designカテゴリー ショートリスト

 
2019年 ニューヨーク他、IPA (International Photography Award) BEST OF SHOW – CURATOR SELECTION
2020年 東京、櫻井 充写真展 「Fe」、アーツ千代田3331
2021年 東京、櫻井 充写真展 「Fe」、アーツ千代田3331
2022年 東京、アートフェア東京2022、Sho+1のブースにて展示
2022年 東京、空即是色 Illusion of Reality、銀座 蔦屋書店「FOAM CONTEMPORARY」にて展示
2022年 東京、櫻井 充写真展「BP」、Sho+1

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