木村尚樹 個展

凪零 Lullscapes – Before It Begins ∶
Zero – Horizon Photographic Art

2026年6月12日(金) – 7月4日(土)
12:00 – 18:00
/ 日・月・祝休廊

Remains Ⅳ, 2025, 96.5 x 96.5cm, archival pigment print, Edition 3

Sho+1では、2026年6月12日(金)から7月4日(土)まで、写真美術作家として国内外で活躍する木村尚樹の2回目となる個展「凪零 Lullscapes – Before It Begins ∶ Zero – Horizon Photographic Art」を開催いたします。
6月11日(木)夕方にオープニングレセプション、また会期中にはアーティスト・トークを予定しております。

「像が視えるよりも前に、すでに何かは始まっている」
もし、像が始まらないとしたら、何が立ち上がるのか。
本展「凪零 Nagi-Rei」において、木村尚樹は、写真という前提そのものを静かに解体していきます。
像を否定するのではなく、その直前へと遡ることで、対象や構図、意味として定着する以前の、「視る」という状態そのものの条件を提示しようと試みます。
「凪零」における静けさとは、単なる沈黙ではありません。
それは、明確な宣言を持たないまま持続する緊張であり、何も主張しないまま、なお終わることのない状態を示しています。

⾧年にわたるモノクローム作品の制作を通して、木村は像が定着する以前の知覚や空間のあり方を探り続けてきました。
「Zero-Horizon -零式-」は、その⾧い実践の中から徐々に輪郭化されてきた、視覚のあり方への構造的な視点です。

本展は、以下の4つのセクションによって構成されます。

Fragments / Resonances / Interference / Remains
・Fragments ― まだ像として結ばれきる以前の、微かな断片的徴候
・Resonances ― 関係が保たれ、静かに持続するもの
・ Interference ― 構造が揺らぎ、整合が崩れていくもの
・ Remains — 何かが退いた後にもなお残り続け、やがて静かに零への帰還(“Return to Zero” )を帯びてゆくもの

本展の核にあるのは、木村が「Zero-Horizon(零式)」として捉えている視点です。
それは理論として解釈されるものではなく、像がまだ自己主張を持たない地点――いわば発生以前の地平とも言える場所です。

対象を描写するのではなく、光や面、空間の断片が立ち現れながらも、ひとつの像として定まることなく留まり続ける作品群。
それらは、立ち上がり・干渉・断絶といった関係性の変化によって構成され、鑑賞者を、確定することのない知覚の場へと導いていきます。

イタリアを中心とした制作活動を背景に、木村のモノクローム作品は、写真表現を極限まで削ぎ落としていきます。光は照らすのではなくためらい、形は確定するのではなく漂い、像は完成を拒みます。
作品は、捉えず、語らず、完結しません。ただ、そこに残り続けるのです。

「何を見るか」ではなく「見ることが、どのように始まり、どこで定まりきらないまま残るのか」。本展は、その静かなゆらぎの場へと鑑賞者を誘います。

ぜひご来廊ください。

アーティスト・ステートメント

静謐な空間に配されたモノクロームの写真群。それらは瞬間を捉えながらも、どこか未だ完結していない印象を与える。新作展「凪零 Lullscapes – Before It Begins ∶ Zero – Horizon Photographic Art」は、写真という媒体が本来持つ可能性を、あらためて問い直す試みである。

写真は⾧らく、世界を像として定着させる手段として扱われてきた。瞬間は切り取られ、枠付けられ、固定される。意味は、すでに識別されたものの周囲に集積していく。

しかし認識が定着する以前に、すでに別の条件が存在している。それは写真の外部ではなく、写真そのものの内部にある。

私は⾧年にわたり、光、距離、空気、都市空間、そして現前と消失の不安定な関係を通じて、モノクローム写真の実践を継続してきた。本展に集められた作品群は、スペクタクルや物語的解決に向かうのではなく、像・知覚・空間関係がいまだ完全には安定していない閾に留まり続ける。

後に私が「Zero-Horizon(零式)」として捉えることになる構造は、写真の否定ではない。むしろ、写真的存在がいかなる条件のもとで立ち現れるのかを問い直そうとする試みである。

ここで写真は、単なる表象としてではなく「関係の構造」として扱われる。光は単に被写体を照らすために存在しているのではない。空間は背景として機能しているのではない。像として現れるものは、生成と保留のあいだでなお揺らぎ続けている。

本展はFragments、Resonances、Interference、Remains など複数のセクションによって構成される。これらは主題分類ではなく、連続、不安定性、残留、知覚的緊張が写真場の内部でどのように可視化されるかを示す異なる条件群である。

「凪零」は、超越や象徴的解釈を目的とするものではない。像・空気・関係・知覚が固定された解釈に回収される以前の状態に、写真がなお触れうるのかを問う試みである。

その不安定な状態の中で、写真はいまだ完全には終わっていない。知覚もまた同様である。

アーティスト・プロフィール

木村尚樹は、京都・西陣で幼少期を過ごし、写真を美術表現として探求するため、1987年に渡米。
現在は「凪(Lullscapes)」を基軸に、光と影、時間と空間のあわいに立ち上がる気配や関係性を探求する写真美術作家として活動している。モノクローム写真が持つ、現実を抽象化し、存在の輪郭を静かに浮かび上がらせる特性は、一貫して彼の表現の根幹を成している。
渡米後はニューヨークを拠点としながら欧州での制作を本格化。特にイタリアを中心とした作品群では、建築や都市空間を単なる記録対象としてではなく、時間の堆積や記憶の残響が滞留する“場”として捉え、独自のモノクローム表現を展開してきた。過去には建築家との協働によるシリーズ制作も行っている。
2017年頃より活動拠点を東京へ移し、欧州での制作を通して深められた“場”への感覚を基盤に、光と影、時間と沈黙が交差する関係性へと制作を展開している。近年の作品では、被写体そのものを描写することよりも、像が定着する以前に存在する気配や、認識へ移行する直前の静かなゆらぎへと視線を向けている。
近年は「零式写真芸術論(Zero-Horizon Photo Art Theory)」および「写道(Shado)」を基盤に、写真を“対象の再現”としてではなく、存在と知覚が交差する条件そのものとして再考する制作・理論活動を展開している。

木村尚樹
Instagram:@cogito0ergo0sum
Website:https://www.naokikimura.com/home-j

展覧会概要

木村尚樹 個展 凪零 Lullscapes – Before It Begins ∶ Zero – Horizon Photographic Art
会期:2026年6月12日(金)– 7月4日(土)
時間:12:00 – 18:00
休廊:日・月・祝
会場:Sho+1

※オープニングレセプション
2026年6月11日(木)18:00 – 20:00
アーティスト在廊予定
お誘いあわせの上、お気軽にお越しください。

Interference I, 2025, 30.5 x 30.5cm, archival pigment print, Edition 7
Resonances, 2025, 30.5 x 30.5cm, archival pigment print, Edition 7
Return to Zero I, 2025, 50 x 50cm, archival pigment print, Edition 7
Return to Zero Ⅱ, 2026, 30.5 x 30.5cm, archival pigment print, Edition 7